
ブランドストーリー|文化と感性を暮らしに編み直す
MCKKは、“寄り道の感性”を育むことをコンセプトとした香りのブランドです。日本文化に息づく“効率では測れない営み”や“不完全の美しさ”を再解釈し、現代の暮らしに馴染む体験へと編み直します。
全国各地の技術ある職人たちと共にプロダクトをつくることで、手仕事や自然素材といったさまざまな土地に根付く文化の営みに光を当て、香りや所作を通じて感覚をひらく体験を生み出していきます。
私たちが目指す、文化と共に暮らすということ
私たちは、日本の各地に今も存在する“土地に根付いた文化や産業”を次世代に紡いでいくため、活動しています。
土地の風土や歴史から生まれた文化と生活の知恵は、伝統的で価値あるものとして後世へと語り継がれています。しかし、それらは現代社会の価値観からは遠ざかり、生活から失われつつある。
私たちは、日本文化や伝統、技術、風習、ものづくりなどの背景を深掘りし、そこから現代の暮らしにも通ずる精神性を紐解きます。そうした文化を日常生活に馴染むよう提供するため、プロダクトや体験という新しい形に落とし込んでいきます。
文化を再解釈し、現代の生活に落とし込み、また新たな文化と出会いを受け入れる。探求と再解釈の循環を通して、文化を次の世代に紡いでいきます。
営みと感性が後回しにされる、現代の課題
MCKKを立ち上げる前、ファウンダーの閏間(うるま)は成長著しいスタートアップ業界で働いていました。その世界に可能性を感じる一方で、数値化できない営みや手触りのある活動が軽視されることに違和感を抱くようになりました。
合理性に基づく判断は、社会に新しい価値を生み出してきました。その一方で、行き過ぎた効率主義は、土地の風土を活かしたものづくりや地域の伝統的風習・祭礼のような文化的な営みを“生産的でないもの”と捉え、社会とのつながりを薄れさせてしまいます。
いまや、人々の暮らしにおいても「非効率に見えるものを削ぎ落とす」考え方が広まっています。短期的な目標達成を優先するあまり、自分の感覚や行為に向き合う時間を失っているのではないでしょうか。
人々の営みに根ざした感性が、静かに姿を消していく。こうした状況に向き合うため、MCKKではプロダクトと体験を通してひとりひとりの感性を育んでいきます。
過程にこそ楽しみを見出す、“寄り道の感性”とは
MCKKは、日本文化のなかにある「どこかへと向かう道のりそのもの」を大切にする精神を“寄り道の感性”と名付け、これを育んでいくことを目指します。
計算し尽くされた物事の完成や、数字で測り切れる結果を追うのではなく、ただ目の前にある楽しみに手を伸ばし、誰でもない自分自身が豊かだと感じる時間を過ごす。
もはや、そこに目的地さえなくてもよいのかもしれません。人よりも長い時間軸を生きる盆栽の世話をして、愛でること。決められた多くの所作と手順を守りながら、もてなしの心を持って茶を立てること。古くから愛されてきた日本的な“豊かさ”は、いまの私たちから見れば“寄り道”とも言えるような余白ある時間のなかから生まれてきたのではないでしょうか。
自分の感性をひらくための営みに時間を注ぎ、行為そのもののなかに遊びと喜びを見出すこと。そうした感覚を、MCKKは“寄り道の感性”と呼び、育みたいと考えています。
「暮らしの中に、寄り道という嗜みを」
プロダクトと体験を通して、私たちは自身の感性と身体性に向き合い直すことができる。MCKKは遠ざかりがちなこの感覚を、日々のなかにそっと宿していきます。
「聞香」から学んだ、身体性との向き合い方
暮らしに“寄り道の感性”を落とし込む手立てを考えるなかで、私たちは古くからある「香道」の文化と出会い、そのなかの「聞香」に大きなヒントを得ました。
「聞香」とは、東南アジアのみで産出される稀少な沈香木(じんこうぼく)を炷き(たき)、香りを鑑賞する行為。意識を集中して聞き分けるために、香りを“嗅ぐ”のではなく“聞く”と表現されてきました。
香道には、何種類かの香木の香りを聞き分け、当てる「組香」という遊びがあります。そこで大切にされるのは、正解を導き出したかどうかよりも、香りを聞き分ける過程にある感覚。体調や気候によっても変化する「この香りを、今日はこう感じた」という体験を通して自分自身の状態を知り、香木の組み方に込められた季節の移ろいや、和歌などから用いられる文化の引用に触れて楽しむ。
そこにはまさに、自身の身体性に向き合う行為、そして、どこかへと向かう道のりの中に楽しみを見つけていく行為がありました。
香りをツールに、身体性と向き合うこと
古くから、香りは「身に纏うこと、空間に漂わせることで、自分自身のアイデンティティを表すもの」として扱われてきました。一方で、魔除けや結界といった意味合いで香りの道具が用いられ、人が内側へと向き合うための役割をも果たしてきました。
いま、私たちは自身の身体性と向き合い、効率や生産性とは違った自分自身の基準で何かに夢中になる機会を失いつつあります。合理的な社会から自分自身の内側へ、視点を切り替えるためのきっかけとして、「香り」は大切なツールになります。
“寄り道”へと向かうための、所作
日本には、所作を大切にする考え方があります。茶道や香道において、儀式的なまでに決められた所作が境界や遊びを生み、感覚をひらくきっかけとなっている。
MCKKはそれをヒントに、香りと所作を組み合わせて、何かに夢中になるための道具として提供していきます。
土地と産業に出会い続ける
MCKKは、日本各地の土地に根付いた文化と産業と出会い、学び、製品と体験を生み出していきます。文化を再解釈し、現代の生活と繋ぐための営みを、日本の香り文化が育まれてきた淡路島の土地からはじめていきます。